小説

捨吉の一生

昔々ある所に、捨吉という男がおりました。 貧しい村の貧しい家の五男に生まれた捨吉は、六つの頃、凍える冬のある晩に山へと連れて行かれました。 不作の秋で食べ物はなく、山で食べ物を探してきなさい、と言い残されたのです。 捨吉…

ねずみになった男の話

ねずみになった男の話

いつものように席を立ち、いつものようにタイムカードに刻印をして、だれにともなく「お疲れ様」と一言残し、男は薄汚れた象牙色のドアをあけた。 「駒井さん、お疲れ様でした」と言葉が返ったのは、廊下に出てドアが閉まる寸前の事だっ…

-less

-less

あの頃。 かけっこが一番速かった方がエライやつだった。 給食を一番早く平らげたほうがエライやつだった。 鉄棒で逆上がりが出来るほうがエライやつだった。 新しい遊びを思いついたほうがエライやつだった。 今思えば、ホントどう…

monochrome

monochrome

その感情をテーマにした歌なら、いつでもラジオから流れてくるのに、それがどんな感覚なのか、私にはまだ良く分からない。 だって、考えていられるほど、今の私は暇じゃない。 だって、考えたくても、そんな相手もいないし。 だって、…