小説

ねずみになった男の話

ねずみになった男の話

いつものように席を立ち、いつものようにタイムカードに刻印をして、だれにともなく「お疲れ様」と一言残し、男は薄汚れた象牙色のドアをあけた。 「駒井さん、お疲れ様でした」と言葉が返ったのは、廊下に出てドアが閉まる寸前の事だっ…

-less

-less

あの頃。 かけっこが一番速かった方がエライやつだった。 給食を一番早く平らげたほうがエライやつだった。 鉄棒で逆上がりが出来るほうがエライやつだった。 新しい遊びを思いついたほうがエライやつだった。 今思えば、ホントどう…

monochrome

monochrome

その感情をテーマにした歌なら、いつでもラジオから流れてくるのに、それがどんな感覚なのか、私にはまだ良く分からない。 だって、考えていられるほど、今の私は暇じゃない。 だって、考えたくても、そんな相手もいないし。 だって、…

heard the echo 0

heard the echo 0  <Pro.>

耳が痛くなるほどの静寂が夜の海を支配していた。 音を無くした世界からの圧迫。 この状況を人間は《嵐の前の静けさ》というのだろうか? だが皮肉かな、本来この海域には、まるで海を寸断するかのような強い電磁波を伴った嵐が常に吹…